これはある熱い男の物語である。
12月になり店先ではクリスマスの曲が流れ、冬の訪れを知らせていた。
コロ助はいつものように10時のコーヒータイムで休憩室に向かった。
椅子に座りコーヒーをすすりながらスマホでツイッターを確認するコロ助。
ナンデヤネーン
ツイッターのつぶやきの中にステイヤーズステークスのアルバートが出走取り消しになったとの情報があったのだ。
頑張ってブログでアルバートが4連覇する物語を書いたのにと嘆くコロ助。
アルバーーーーート。
コロ助がそう泣き叫んでいる、まさにその時中山競馬場で目をギラギラさせている男がいた。
蛯名正義。
今日の物語の主人公である。
庄野「蛯名君。おはよう。」
蛯名「おはようございます庄野先生。」
庄野「今日はよろしく頼むよ。リッジマンもしっかり仕上げて来たから長距離が得意な蛯名君に全て託すよ。」
蛯名「まかせてください。最近は外国人ジョッキーばかりが取り上げられるのに腹が立ってるんで、日本人ジョッキーの意地を見せてやりますよ。」
庄野「蛯名君は外国人ジョッキーが嫌いだからね(笑)。でも頼もしいよ。ところでアルバートが出走取り消しになったのは聞いたかい?」
蛯名「ええ。さっき聞いたばかりです。残念ですね。アルバートが出てきても勝つ自信はあったんですけどね。」
庄野「私としては強力なライバルがいなくなったのでチャンスが増えたという感想だよ。それじゃ乗り方は蛯名君に任せるから頼んだよ。」
そしてレースの時を迎えた。
好スタートをきるリッジマンと蛯名騎手。
カレンラストショーら先行勢が前に行った瞬間にすぐさま内にリッジマンを入れる蛯名騎手。
『上手い。』
コロ助は思わずうなった。
3600メートルも走るレースだ。やはり外外を回すよりインベタを走る方がロスがない。
この辺りはさすがベテランの蛯名騎手。
いつでも仕掛けられる位置でがっしりと折り合っているリッジマン。
『これはリッジマンが勝つな。』
コロ助はそう思いながらリッジマンを見ていた。
最終コーナー前から各馬動きが激しくなる。
楽な手応えで上がっていくリッジマン。
最後は2着のアドマイヤエイカンに2馬身半をつける完勝だった。
調教師の完璧な仕上げに騎手の完璧な騎乗。
勝つべくして勝ったレースであった。
クールな顔をして引き上げてくる蛯名騎手。
『蛯名ー』
『蛯名さーん』
蛯名騎手を讃えるファンの声援。
蛯名「野郎のファンばっかりだな。俺も若い女の子にキャーキャー言われたかったぜ。」
なんてことは言えないが、野太い声援に応える蛯名騎手。
熱きサムライ蛯名正義。
彼のような熱い男がどんどん出てきて欲しいと願うコロ助であった。
完
コロ助「蛯名ー。」
実況「ここにもいた。野太い声の野郎が。」
コロ助「蛯名さん。やっぱり長距離うめーよ。すっとインを取る騎乗には痺れたよね。調教師の勉強も大変だろうけど、ダービーもまだまだ可能性があるし頑張って欲しいよね。」
実況「ダービーは悲願ですし頑張って貰いたいですよね。」
コロ助「ジョッキーでもダービー。調教師でもダービーですね蛯名さん。」
実況「蛯名さんと言えば外国人ジョッキー嫌いで有名ですけど、外国人ジョッキーに負けない日本人ジョッキーがどんどん出てきて欲しいですよね。」
コロ助「現在、外国人ジョッキーに対抗できそうな日本人ジョッキーは少ないですからね。
意地を見せろー。サムライ達よー。」